木目金を知る



<第24回> 杢目金屋収蔵 刀装具 木目金鐔(つば)復元研究

  2019年11月18日

代表の髙橋が今年復元研究制作を行ったのは江戸時代中後期の鐔「銘 作州の住 正光」です。日本美術刀剣保存協会「現代刀職展」にその復元鐔を出品しました。
前回の復元研究報告「木目金を知る第9回」や「第20回」においても木目金の模様の特徴を分類毎に解説しましたが、今回の鐔の模様はそれらとも異なる特徴がみられます。今回はこの鐔の木目金模様に注目してご紹介します。

 
上品で女性的な奥ゆかしさの漂う八角形の鐔。古代日本において八は大変縁起の良い「聖数」とされ、また全ての方位「八卦(はっけ)」を示すというバランスが良く安定した形です。すっきりとした八角形の鐔一面に広がる繊細な木目金の模様。あたかも朱色の銅の地に「墨流し」により繊細で複雑な線を写し取ったかのようです。
黒い色の部分は赤銅(銅と金の合金)で、木目金はこの赤銅と銅を何層にも積層した素材にタガネで凹凸をつけ削り出すことで模様を浮かび上がらせます。銅に対して赤銅の厚みをかなり薄くしたものを重ねることで、最終的に平らにした時に細く繊細な線を描くことができます。



「木目金地鐔 銘 作州之住 正光」復元制作 髙橋正樹
 
日本では平安時代の三十六歌仙の和歌を集めた「三十六人家集」の巻物のように、和歌をしたためる脇役としての下地の紙に様々な装飾を施したものが見られます。「継紙」と呼ばれる異なる色の和紙を継いだ美しい絵画的なものや、華麗な模様を透かしにより漉いた和紙、金箔等をちらす装飾などと共に「墨流し」もその一つです。水面に墨をたらしこみ、揺れ動く模様をそのまま和紙に写し取ることで、二度と同じものが現れない唯一無二の現象をとらえる技法です。その模様はまた刻々とうつろう雲が生み出す幻想的な空模様にも通じるところがあるかもしれません。


三十六人家集
 
そして木目金の技法も同様です。この鐔の制作者は偶然性を利用しながら模様を生み出すその特性の共通点を感じ取り、模様として表現したのではないでしょうか。刀に装着した状態では一見、はた目には模様はわからないでしょう。しかしながら間近で眺めれば眺めるほど無限に広がる複雑で繊細な模様に引き込まれる不思議な魅力を持った木目金の鐔です。



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